礼文島の花

礼文に咲く花々の多くは、サハリンやカムチャッカ、アリューシャン列島などを故郷とする北方系の植物。一般には高山帯でよく見られるそれらは、氷河によって運ばれ、氷河期が終っても生き残ったものといわれています。本州のアルプスや北海道の大雪山系でしか見られない花々を、登山をしなくても気軽に見られるのが、礼文の魅力。また、レブンアツモリソウやレブンコザクラ、レブンキンバイソウ、レブンウスユキソウなど、礼文島でしか見られない固有種の花が多いのも特徴です。そんな礼文ならではの固有種・希少種をピックアップしてご紹介します。

4月開花

  • エゾノハクサンイチゲ(蝦夷の白山一花)
    • キンポウゲ科
    • 開花期:4~5月
    • 分布エリア:
      アナマ川、宇遠内コース、礼文滝コース、礼文林道コース、桃岩展望コース
    島の高山植物の中では最も早く花時を迎える花のひとつ。本州のハクサンイチゲと比べると背丈が少し低いのが特徴です。
    西海岸の山の斜面に多く見られ、見事な群落を形成しています。

5月開花

  • レブンコザクラ(礼文小桜)
    • キンポウゲ科
    • 開花期:5~6月
    • 分布エリア:
      8時間コース、アナマ川、宇遠内コース、礼文滝コース、桃岩展望コース
    礼文を代表する花のひとつ。たくさんの小花が手まりのように集まって咲き、斜面を紅紫色に染め上げます。背丈は、20cmほど。隣の利尻島には、同じ仲間のエゾコザクラが自生しています。
  • イワベンケイ(岩弁慶)
    • ベンケイソウ科
    • 開花期:5~6月
    • 分布エリア:
      宇遠内コース、礼文滝コース、礼文林道コース、桃岩展望コース
    花期には高さ10~30cmにそだちます。切り取られてから数日、放置されても土に挿すと根付く強さから、弁慶の名が付けられたといわれています。
  • ミヤマオダマキ(深山苧環)
    • キンポウゲ科
    • 開花期:5~6月
    • 分布エリア:
      礼文島全域
    昔、麻糸を巻いた道具、苧環(おだまき)と、青紫色とクリーム色の花姿が似ていることからつけられた名前です。高さは25cmほどに育ち、高山植物の中でも比較的大型。繁殖力が強く、人家の近くにも咲いています。
  • レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)
    • ラン科
    • 開花期:5~6月
    • 分布エリア:
      レブンアツモリソウ自生地
    アズキ色などの濃い花色が多いアツモリソウのなかで、島の特産種であるレブンアツモリソウだけがクリーム色の淡い色の花をつけます。
    その希少性と美しさから盗掘が相次ぎ、数が激減。かつては島中で見られまたが、現在では保護柵に守られた自生地で生育しています。

6月開花

  • フタナミソウ(二並草)
    • キク科
    • 開花期:6月
    • 分布エリア:
      希少種につき非公開
    日本固有の花で、礼文島にのみ分布しています。名前は、礼文岳の隣にある二並山の名にちなんで付けられました。特に岩場を好み、崖や岩の上にポツンと咲いているのが時々見かけられます。運良く花を見つけても、危険なのでうかつに近寄らず、遠くから観察しましょう。
  • レブンハナシノブ(礼文花忍)
    • ハナシノブ科
    • 開花期:6月
    • 分布エリア:
      8時間コース、礼文林道コース、桃岩展望コース
    道内に咲くカラフトハナシノブの中で、礼文島に自生するものは、花が茎につく場所が短く、花が密生しています。このため、特に礼文の名をつけて区別しています。
  • レブンキンバイソウ(礼文金梅草)
    • キンポウゲ科
    • 開花期:6月
    • 分布エリア:
      桃岩展望コース
    シベリア東部などの北方を故郷にする比較的大きな高山植物で、日本では礼文島のみに自生。桃岩歩道なかほどの湿った谷あいに群生しています。
  • サクラソウモドキ(桜草擬)
    • サクラソウ科
    • 開花期:6月
    • 分布エリア:
      8時間コース、宇遠内コース、礼文滝コース、桃岩展望コース
    渓流沿いや湿った土地に好んで生え、赤紫色の浅い鐘型の花を咲かせます。
  • チョウノスケソウ(長之助草)
    • バラ科
    • 開花期:6月
    • 分布エリア:
      希少種につき非公開
    氷河期の遺存植物のひとつ。高さ20~50cmの小低木で、高山帯の草地に生える。花の島と呼ばれる礼文でも、自然の中で見つけるのが最も難しい花ともいわれています。
  • レブンソウ(礼文草)
    • マメ科
    • 開花期:6~7月
    • 分布エリア:
      桃岩展望コース
    礼文島固有のマメ科の植物。島内には、数多くのマメ科の植物が自生し、そのほとんどが紫系統の花をつけます。レブンソウは、白い絹毛が目立つのが特徴。図鑑を持参して、じっくりと観察してみてください。
  • トチナイソウ(栃内草)
    • サクラソウ科
    • 開花期:6~7月
    • 分布エリア:
      希少種につき非公開
    千島で初めてこの花を採取した北海道庁技官、栃内壬五郎氏を記念して、この名前がつけられました。花茎の高さ3cm、花の大きさは5mmという、小さな植物で、国内でも限られた地域に稀に自生する植物です。礼文島でもごく一部の限られた場所にわずかに自生するだけの非常に貴重な花です。
  • レブンウスユキソウ(礼文薄雪草)
    • キク科
    • 開花期:6~7月
    • 分布エリア:
      8時間コース、宇遠内コース、礼文滝コース、礼文林道コース、桃岩展望コース
    欧州でエーデルワイスと呼ばれる花の仲間。全体が白い綿毛で覆われ、雪が薄く積もったように見えることからウスユキソウと呼ばれ、礼文町の町花に指定されています。花期の長い花としても知られ、秋になると星のカタチのまま乾いて、丘の上で雪の訪れを待っている姿が見られます。
  • レブンシオガマ(礼文塩竈)
    • ゴマノハグサ科
    • 開花期:6~7月
    • 分布エリア:
      礼文島全域
    礼文に自生するヨツバシオガマで、葉が5,6枚輪生し、花が10段以上にもなる大型のものをレブンシオガマと呼んで、区別しています。花穂は下段から徐々に開花していきます。
  • シコタンソウ(色丹草)
    • ユキノシタ科
    • 開花期:6~7月
    • 分布エリア:
      希少種につき非公開
    岩れき地や岩場の岩の隙間で、3~5cmの高さに育ちます。細い茎の先に白い星型の花をつけ、繊細なたたずまい。高山植物のたくましさと可憐さを併せ持つ、希少種です。別名、レブンクモマグサとも呼ばれています。
  • チシマゲンゲ(千島紫雲英)
    • マメ科
    • 開花期:6~8月
    • 分布エリア:
      8時間コース、宇遠内コース、礼文滝コース、礼文林道コース、桃岩展望コース
    同じ時期に咲くレブンソウとの区別が難しい花。レブンソウの花が下を向いて咲くのに対し、チシマゲンゲは下向きに咲いています。また、チシマゲンゲは大雪山系などの北海道の高山にも分布しています。

7月開花

  • ウルップソウ(得撫草)
    • キキョウ科
    • 開花期:7月
    • 分布エリア:
      希少種につき非公開
    日本国内では、礼文島と本州の白馬山系と八ヶ岳のみに隔離分布しています。このことから、高山植物が氷河期の貴重な遺産であることが分かるといわれています。礼文島では特に少なく、学術的にも大変貴重な財産となっています。
  • レブントウヒレン(礼文唐飛簾)
    • キク科
    • 開花期:7~8月
    • 分布エリア:
      宇遠内コース
    高さが最大35cmにもなるナガバキタアザミの変種。全体に小型で高さは5~13cmほどですが、花が集まる頭花や花を包むガクのような葉は、ナガバキタアザミと変わらない大きさに育ちます。礼文島では、この仲間のエゾトウヒレンも見られます。

8月開花

  • チシマリンドウ(千島竜胆)
    • リンドウ科
    • 開花期:8~9月
    • 分布エリア:
      スコトン山道、8時間コース、宇遠内コース、礼文林道コース、桃岩展望コース
    礼文島の秋を象徴する高山植物。日本では、隣の島、利尻と後志太平山に分布しています。高さ10cmほどで、茎の上部に紫色の花が集まって咲いています。